厳格なグルコースコントロールは心血管イベントを減らすか

今回は血糖コントロールについての論文で、VADT試験と呼ばれるものです。

さて読んでいましょう。

 

【論文情報】

Glucose control and vascular complications in veterans with type 2 diabetes.

Duckworth W, et al. N Engl J Med. 2009.

PMID: 19092145

 

【論文のPECOは何か?】

P:2型糖尿病退役軍人1791人(平均年齢 60.4歳)

  平均BMI 31.3、ベースライン時平均HbA1c 9.4%

  平均罹病期間 11.5

 

E:集中的なグルコースコントロール

  ※目標:標準治療と比較してHbA1cの絶対差が1.5%

 

C:標準的なグルコースコントロール

 

O:心血管イベントの最初の発生までの期間

心筋梗塞脳卒中、心臓血管の原因による死、うっ血性心不全、血管疾患の手術、手術不能な冠状動脈疾患、および虚血性壊疽の切断)

 

【研究デザイン】

ランダム化比較試験

 

【ランダム割付けされているか】

ランダム化されている

 

【真のアウトカムか?】

真のアウトカム

 

【アウトカムは明確か?】

明確

 

【Baselineは同等か?】

同等

 

【ITT解析か?】

ITT解析

 

【結果に影響を及ぼすほどの脱落があるか?】

追跡率=結果のn/割付時のn=1532/179185.5%

で特に問題なし

 

【マスキング(盲検化)されているか?】

オープンラベル

 

【症例数は十分か?】

サンプルサイズ:1700 α:0.05 power:86

症例数は十分

 

【追跡期間】

5.6

 

【結果の評価】

HbA1c値は両群ともに3ヵ月後には低下して6ヵ月後以降は安定した(E群6.9%,C群8.4%)

 

心血管イベントの最初の発生までの期間

ハザード比:0.88, 95CI0.741.05, P = 0.14

 

有害事象

心血管死(ハザード比:1.32,95%CI:0.81-2.14,P=0.26)

全死亡(ハザード比:1.07,95%CI:0.81-1.42,P=0.62)

増殖性糖尿病性網膜症(P=0.27)や黄斑変性(P=0.31)の発生に有意差はなし

アルブミン尿症の増加は標準治療群でより多い(P0.01)

末梢神経障害の発生に有意差はなし(P=0.94)

 

【コメント】

有名な論文では他にもACCORD試験やADVANCE試験がありますが、

それらと同様に2型糖尿病患者において厳格な血糖コントロールが必ずしも心血管イベントを減少させる訳ではないという結果です。

罹病期間が長い場合では、あまり過度に血糖を下げるのは避けた方がいいかもしれませんね。

小児がんサバイバーとその兄弟の健康状態の比較

今回は小児がんサバイバーの予後について検討した論文です。

 

さて読んでいきましょう。

 

【論文情報】

Chronic health conditions in adult survivors of childhood cancer.

N Engl J Med. 2006 Oct 12;355(15):1572-82.

PMID: 17035650

 

【論文のPECOは何か?】

P:1970年から1986年の間に小児がんの診断を受けた成人

 

E:生存者10,397(がん診断あり)

 

C:兄弟姉妹3034(がん診断なし)

 

O:健康障害の重症度スコア

 

スコアはCTCAE(Common Terminology Criteria for Adverse Events)を使用

グレード1:軽度

グレード2中等度

グレード3重度

グレード4生命を脅かす

グレード5致命的

 

【研究デザイン】

後ろ向きコホート研究

 

【真のアウトカムか?】

真のアウトカム

 

【研究集団の代表性は?】

北米のCCSS(Childhood Cancer Survivor Study)のデータを利用している

 

【追跡期間は?】

(少なくとも)5年間

 

【調整した交絡因子は何か?】

登録時の年齢、性別、人種または民族グループ

 

【結果】

健康障害(グレード1~4

サバイバー:62.3% 兄弟:36.8

 

重度または生命を脅かす健康障害(グレード3 or 4

サバイバー:27.5% 兄弟:5.2

 

健康障害ごとの相対リスク

主な関節置換術 サバイバー:1.61% 兄弟:0.03% RR=54.0 (95%CI:7.6~386.3)

 

うっ血性心不全 サバイバー:1.24% 兄弟:0.10% RR=15.1 (95%CI:4.8~47.9)

 

がんの再発 サバイバー:2.38% 兄弟:0.33% RR=14.8 (95%CI:7.2~30.4)

 

重度認知機能障害 サバイバー:0.65% 兄弟:0.10% RR=10.5 (95%CI:2.6~43.0)

 

冠動脈疾患 サバイバー:1.11% 兄弟:0.20% RR=10.4 (95%CI:4.1~25.9)

 

 

がんによる慢性健康障害の相対リスク

グレード1~4:RR=3.3(95%CI:3.0〜3.5)

グレード3 or 4:RR=8.2(95%CI:6.9〜9.7)

 

【コメント】

今回の論文はうまいPECO立てができず、まだまだだなと痛感しました。要は小児がんの既往歴があるサバイバーと、がん既往歴がないその兄弟との比較ですね。結果を見るとサバイバーの方が何かしらの健康障害が起こるリスクは高そうです。

 

気になるところでは、がん再発が14.8倍と高い数値になっていますが、再発する確率自体が低いので相対リスクだけを見て判断するのは注意が必要かもしれないです。

 

今回は兄弟間での比較でしたが、親子間ではどういう結果になるのかまた疑問が出てきますね。該当する論文がないか探してみたいです。

 

また、この研究でのコホートはCCSS(Childhood Cancer Survivor Study)のデータを使ってるのですが、公式ホームページ?もありますので、ぜひ見てみてください。

CCSS | Childhood Cancer Survivor Study

このページのPublished Researchの所を見ると他にも膨大な量の論文が出ていることがわかります。これらも追って読んでみたいと思います。

アジスロマイシンでCOPD悪化は予防できるか

まず一発目の論文はこちら。

 

商品名ではジスロマックとして知られるアジスロマイシンですが、この薬でCOPDの悪化は予防できるのかがテーマの論文です。

 

さて読んでいきましょう。

 

 

【論文情報】

Azithromycin for prevention of exacerbations of COPD

N Engl J Med. 2011 Aug 25;365(8):689-98.

PMID: 21864166

 

 

【論文のPECOは何か?】

P:急性増悪のリスクが高いCOPD患者(1142人)

 ※除外基準:聴覚障害、安静時頻脈、補正QT間隔延長リスク

 

E:標準治療+アジスロマイシン250mg/日(570人)

 

C:標準治療+プラセボ(572人)

 

O:COPDの初回急性増悪までの期間

 

【研究デザイン】

 ランダム化比較試験

 

【ランダム割付けされているか】

 ランダム化されている

 

【真のアウトカムか?】

 QOLに影響するので真のアウトカムと言える

 

【アウトカムは明確か?】

 明確

 

【患者背景は同等か?】

 同等

 

【ITT解析か?】

 ITTと記載あり

 

【結果に影響を及ぼすほどの脱落があるか?】

追跡率:アジスロマイシン群が89%、プラセボ群が90%で特に問題ない

 

【盲検化されているか?】

Protocolにdouble-blindと記載あり

 

【症例数は十分か?】

サンプルサイズ:1130人 α:0.05 power:90%

症例数は十分である 

 

【追跡期間】

 1年間

 

【結果】

初回増悪までの期間の中央値

アジスロマイシン群:266日(95%CI:227~313)

プラセボ群:174日(95%CI:143~215)

(P<0.001)

 

増悪の頻度

アジスロマイシン群:1.48回/人年

プラセボ群:1.83回/人年

(P=0.01)

 

アジスロマイシン群におけるCOPD急性増悪発生のハザード比

HR=0.73(95%CI:0.63~0.84)(P<0.001)

 

SGRQスコア(St. George's Respiratory Questionnaire、評価スコア0~100、低値ほど機能良好)の改善

アジスロマイシン群のほうがプラセボ群よりも大きかった

(平均減少 2.8±12.8 vs 0.6±11.4、P=0.004)

 

最小有意差である 4 単位以上の低下がみられた患者の割合

アジスロマイシン群:43%

プラセボ群:36%

(P=0.03)

 

聴力低下の発生

アジスロマイシン群:25%

プラセボ群:20%

(P=0.04)

 

【コメント】

特定のCOPD患者において、標準治療に加えてアジスロマイシンを1年間服用すると急性増悪の頻度を減らすことが示されています。ただし一部の患者で聴力障害が認められたという事です。ジスロマックの添付文書を見てみると、副作用の項目で聴力低下(頻度不明)、過量投与の項目で聴力障害を起こす可能性があると記載されていました。

 

この論文では1年間の服用となっていますが、それ以上の服用での影響も気になるところではあります。しかし論文中にも書かれている通り、耐性菌出現パターンが変化する可能性があるので長期服用は注意した方が良さそうです。

ブログ始めてみました

初めまして!

この度ブログを始めてみました。

 

EBMを勉強中の薬局薬剤師です。

このブログでは主に論文を読んで吟味した内容を書いていきます。

 

私は自他共に認めるほど記憶力が無く、論文を読んでもすぐに忘れてしまいますので、忘備録もかねてブログで残していこうと思った訳です。

 

正直論文読解力はあまりありませんので、このブログ内の批判的吟味の内容は信用しないようにお願いします。ちなみに文章力も残念なレベルですので、読みにくい文が所々出てくるかもしれませんが、ご了承下さいm(_ _)m

 

論文以外にも何か気になる事があれば記事にするかもしれませんが、行き当たりばったりで始めたのでまだ何も考えてません(^^;)

 

まぁ無理せず気楽にやっていこうと思います。

どうぞよろしくお願い致します!