アジスロマイシンでCOPD悪化は予防できるか
まず一発目の論文はこちら。
商品名ではジスロマックとして知られるアジスロマイシンですが、この薬でCOPDの悪化は予防できるのかがテーマの論文です。
さて読んでいきましょう。
【論文情報】
Azithromycin for prevention of exacerbations of COPD
N Engl J Med. 2011 Aug 25;365(8):689-98.
PMID: 21864166
【論文のPECOは何か?】
P:急性増悪のリスクが高いCOPD患者(1142人)
※除外基準:聴覚障害、安静時頻脈、補正QT間隔延長リスク
E:標準治療+アジスロマイシン250mg/日(570人)
C:標準治療+プラセボ(572人)
O:COPDの初回急性増悪までの期間
【研究デザイン】
ランダム化比較試験
【ランダム割付けされているか】
ランダム化されている
【真のアウトカムか?】
QOLに影響するので真のアウトカムと言える
【アウトカムは明確か?】
明確
【患者背景は同等か?】
同等
【ITT解析か?】
ITTと記載あり
【結果に影響を及ぼすほどの脱落があるか?】
追跡率:アジスロマイシン群が89%、プラセボ群が90%で特に問題ない
【盲検化されているか?】
Protocolにdouble-blindと記載あり
【症例数は十分か?】
サンプルサイズ:1130人 α:0.05 power:90%
症例数は十分である
【追跡期間】
1年間
【結果】
初回増悪までの期間の中央値
アジスロマイシン群:266日(95%CI:227~313)
プラセボ群:174日(95%CI:143~215)
(P<0.001)
増悪の頻度
アジスロマイシン群:1.48回/人年
プラセボ群:1.83回/人年
(P=0.01)
アジスロマイシン群におけるCOPD急性増悪発生のハザード比
HR=0.73(95%CI:0.63~0.84)(P<0.001)
SGRQスコア(St. George's Respiratory Questionnaire、評価スコア0~100、低値ほど機能良好)の改善
アジスロマイシン群のほうがプラセボ群よりも大きかった
(平均減少 2.8±12.8 vs 0.6±11.4、P=0.004)
最小有意差である 4 単位以上の低下がみられた患者の割合
アジスロマイシン群:43%
プラセボ群:36%
(P=0.03)
聴力低下の発生
アジスロマイシン群:25%
プラセボ群:20%
(P=0.04)
【コメント】
特定のCOPD患者において、標準治療に加えてアジスロマイシンを1年間服用すると急性増悪の頻度を減らすことが示されています。ただし一部の患者で聴力障害が認められたという事です。ジスロマックの添付文書を見てみると、副作用の項目で聴力低下(頻度不明)、過量投与の項目で聴力障害を起こす可能性があると記載されていました。
この論文では1年間の服用となっていますが、それ以上の服用での影響も気になるところではあります。しかし論文中にも書かれている通り、耐性菌出現パターンが変化する可能性があるので長期服用は注意した方が良さそうです。