小児がんサバイバーとその兄弟の健康状態の比較
今回は小児がんサバイバーの予後について検討した論文です。
さて読んでいきましょう。
【論文情報】
Chronic health conditions in adult survivors of childhood cancer.
N Engl J Med. 2006 Oct 12;355(15):1572-82.
PMID: 17035650
【論文のPECOは何か?】
P:1970年から1986年の間に小児がんの診断を受けた成人
E:生存者10,397人(がん診断あり)
C:兄弟姉妹3034人(がん診断なし)
O:健康障害の重症度スコア
スコアはCTCAE(Common Terminology Criteria for Adverse Events)を使用
グレード1:軽度
グレード2:中等度
グレード3:重度
グレード4:生命を脅かす
グレード5:致命的
【研究デザイン】
後ろ向きコホート研究
【真のアウトカムか?】
真のアウトカム
【研究集団の代表性は?】
北米のCCSS(Childhood Cancer Survivor Study)のデータを利用している
【追跡期間は?】
(少なくとも)5年間
【調整した交絡因子は何か?】
登録時の年齢、性別、人種または民族グループ
【結果】
健康障害(グレード1~4)
サバイバー:62.3% 兄弟:36.8%
重度または生命を脅かす健康障害(グレード3 or 4)
サバイバー:27.5% 兄弟:5.2%
健康障害ごとの相対リスク
主な関節置換術 サバイバー:1.61% 兄弟:0.03% RR=54.0 (95%CI:7.6~386.3)
うっ血性心不全 サバイバー:1.24% 兄弟:0.10% RR=15.1 (95%CI:4.8~47.9)
がんの再発 サバイバー:2.38% 兄弟:0.33% RR=14.8 (95%CI:7.2~30.4)
重度認知機能障害 サバイバー:0.65% 兄弟:0.10% RR=10.5 (95%CI:2.6~43.0)
冠動脈疾患 サバイバー:1.11% 兄弟:0.20% RR=10.4 (95%CI:4.1~25.9)
がんによる慢性健康障害の相対リスク
グレード1~4:RR=3.3(95%CI:3.0〜3.5)
グレード3 or 4:RR=8.2(95%CI:6.9〜9.7)
【コメント】
今回の論文はうまいPECO立てができず、まだまだだなと痛感しました。要は小児がんの既往歴があるサバイバーと、がん既往歴がないその兄弟との比較ですね。結果を見るとサバイバーの方が何かしらの健康障害が起こるリスクは高そうです。
気になるところでは、がん再発が14.8倍と高い数値になっていますが、再発する確率自体が低いので相対リスクだけを見て判断するのは注意が必要かもしれないです。
今回は兄弟間での比較でしたが、親子間ではどういう結果になるのかまた疑問が出てきますね。該当する論文がないか探してみたいです。
また、この研究でのコホートはCCSS(Childhood Cancer Survivor Study)のデータを使ってるのですが、公式ホームページ?もありますので、ぜひ見てみてください。
CCSS | Childhood Cancer Survivor Study
このページのPublished Researchの所を見ると他にも膨大な量の論文が出ていることがわかります。これらも追って読んでみたいと思います。